海賊
「・・・・・・・眠れない・・・・。」
ナミは呟き、部屋を出た。
船のデッキに登り、波打つ波を見つめる。
「静かね・・・・。」
ドンッ
背後で何かが落ちてくる音が聞こえた。
ナミは驚き、恐る恐る後ろを振り向く・・と・・・・。
「いっててててててて・・・・・・。」
打ち付けた頭を押さえて、ルフィが姿を現した。
「・・何してんの?」
ナミが呆れ顔でルフィに問いかけると、ルフィは笑った。
「ん?あぁ、ナミ。」
はぁ・・・。とため息をつき、ナミはもう一度問いただした。
「な・に・を・し・て・い・る・の?」
ルフィはきょとんとした顔でナミを見つめ、言った。
「上で寝てたら落ちた。」
彼が指さす方向には、見張り台。
ひゅうっと冷たい風は吹き、二人の髪を揺らしていく。
ナミは、部屋で寝ている男どもを起こさないよう、なるべく小さな声になるよう怒鳴った。
「アンタねぇ!見張りが眠りくさってどうすんのよ!船と乗船員の命を守るのが見張りの役目なのよ?アンタが寝てる間に船が襲われたりでもしたらどうしてくれんのよぉっ!!!」
「大丈夫だよ。」
ナミは、はたとルフィを見た。
怒っているにも関わらず、目の前の彼は今、確かに言ったのだ。
"大丈夫"
そして彼は、そのまま続けた。
「俺、強いもん。」
ゴッ・・・・・・!!
ルフィの頭に、拳骨が飛んだ。
ナミは立ち上がり、ルフィに背を向けて船の手すりに手を掛けた。
「何よ。アンタが寝てちゃ意味ないでしょ。だいたい、このグランドラインに挑戦してるヤツ全員より、ルフィが強いはずがないじゃない。」
ルフィにはそう言ったが、ナミの頬は赤い。
(・・・でも・・・、ちょっとかっこよかったかも・・・・・・・・・。)
「なぁ。」
横からひょいっとルフィの顔が覗く。
顔が赤くなっているのを悟られないかと戸惑ったナミは、ルフィの視線から顔を背けた。
「いっ・・・・イキナリ出てこないでよね。」
しかし、すかさずルフィはナミの前に周り、じっとその目を見つめた。
「な・・何よ!??」
顔は、冷たい風のお陰で赤くは見えない。
ルフィは後ずさるナミをじっと見つめて言った。
「お前、まだ海賊嫌い?」
ルフィの唐突な質問に目を丸くしたが、ナミは呟いた。
「・・・・嫌いよ・・・・・・・・・・。」
ナミがはっきりと言い切ったことに、ルフィは動じていなかった。しかし、それは悪魔でも外見だけだが・・。
「アンタは・・・・?」
聞いたことのない質問。
こいつは何て答えるだろう・・・・。ナミは思った。
「・・俺は好きだ。ヤなヤツもいるけど、俺は好きで海賊やってんだかんな。」
にぃっと笑ってみせる。
そう答えるだろうと確信していたナミだったが、ルフィの口からその答えを聞くと、深みが増してくる。
ナミは歩き出した。
「もう遅いから、寝るわ。見張り、ちゃんとしなさいよ?」
振り返ってそれだけを伝え、再びルフィに背を向けた。
5歩ほど歩いて、不意に立ち止まる。
ルフィは首を傾げた。
「海賊・・・・。」
ナミは呟き、そして続けた。
「嫌いだけど・・・少なくとも、此の船に乗ってるヤツらは例外よ。」
再び歩き出した。
その後ろで、
ルフィが満面の笑みを浮かべて笑っていた。